Twitterを買収した事で有名なイーロン・マスク氏は、非常に貴重な1文字ドメイン「X.com」を所有しています。
1文字の.comドメインは、X.comを含めて世界に3つしか存在しません。
なぜマスク氏はこのような貴重なドメインを持っているのか?
1文字ドメイン「X.com」について解説します。
X.comの歴史
X.comの登場からTwitterへリダイレクトされるまでの歴史を簡単に解説します。
1993年4月2日
X.comは1993年4月2日に、ピッツバーグ・パワーコンピュータという会社を創業したマーセル・デパオリス氏とデイヴ・ワインスティーン氏の2人のエンジニアによって登録されました。
X.comは”工事中”
インターネット上のウェブサイトを保存している「Wayback Machine」に残っている記録によると、X.comは1996年ごろは「工事中」でした。
当時のウェブサイトによると、X.comにはマーセル・デパオリス氏とデイヴ・ワインスティーン氏の他に、ロブ・ウォーカー氏とスザンヌ・デパオリス氏の2名が関わっているようです。
その後、1998年8月にはロブ・ウォーカー氏個人のウェブサイト(?)になっています。
マスク氏がX.comを手に入れる
イーロン・マスク氏は1999年に「X.com」を購入する為、彼らに接触します。
そして、現金とX.comのシリーズA資金調達ラウンドの150万株と引き換えにX.comを手に入れます。
マスク氏は、X.comの取得に100万ドル以上のお金をかけたと言われています。
PayPalの前身となるオンライン銀行・X.comを起業
ドメイン・X.comを入手したマスク氏は、ドメイン名そのままの名前で金融サービス(オンライン銀行)を仲間(エド・ホー氏、ハリス・フリッカー氏、クリストファー・ペイン氏)と共に創業します。
X.comはドメイン名であると同時に、会社名・サービス名でもあった訳です。
こちらが、当時(2000年3月1日)のX.comです。
(スクリーンショット:X.com)
当時のウェブサイトには、なぜサービス名に「X」と名付けたのかも記されています。
X.comのことを耳にした人は、なぜ金融サービスのサイトにこんな変わった名前を選んだのかと不思議がることが多いです。
私たちは微笑みながら、”なぜでしょう?”と尋ねます。
Xはシンプルでわかりやすく、見せかけや誤魔化しがありません。
まさに私たちの金融サービスに対するアプローチのようなものなのです。
出典:X.com
また、2023年に出版されたイーロン・マスク氏の伝記「イーロン・マスク」では、マスク氏がX.comという名前を気に入っていた5つの理由が明かされています。
- 才気に走っていない
- シンプル
- 覚えやすい
- 入力しやすい
- @x.comという電子メールアドレスが使えて、めちゃめちゃクールである
出典:イーロン・マスクはなぜ“X”という文字が好きなのか? 「ポルノサイトみたい」と批判されてもこだわる「5つの理由」 | 文春オンライン
X.comは、後にピーター・ティール氏らが起業したコンフィニティ社と合併し、決済サービスは「PayPal」となります。
こうした経緯の為、X.comというドメインは長らくPayPalが保有していました。
ちなみに、イーロン・マスク氏の当時のメールアドレスは「e@x.com」でした。
2017年に再びマスク氏がX.comを取得
イーロン・マスク氏は2017年に、PayPalからX.comを買い戻しました。
以下はその事を報告する投稿です。
X.comの買い戻しを許可してくれたPayPalに感謝します!今のところ利用する計画はありませんが、X.comは私にとって非常に感情的な価値があります。
ドメインに関するメディアであるDomainInvesting.comのエリオット・シルバー氏によれば、X.comの価格は8桁(≒日本円で10億円以上)に達する可能性があるとのことです。
ドメイン・X.comを買い戻したイーロン・マスク氏ですが、しばらくはX.comを使用しませんでした。
X.comにアクセスしても、左上に小さく「x」と表示されるだけです(ちなみにエラーページは「y」と表示されます)。
一時期(2017年末)はX.comをマスク氏が2016年12月に起業した「The Boring Company」の帽子を販売するページ(現在は終了)にリダイレクトしていました。
ですが、しばらくして元に戻り、コンテンツは「x」と書かれたトップページと「y」と書かれたエラーページのみになっています。
2023年、TwitterはXに
2023年7月、イーロン・マスク氏は買収したTwitterをリブランディングして「X」へと変更し、URLもtwitter.comからx.comにすると発表しました。
間もなく私たちはTwitterブランドと全ての鳥に徐々に別れを告げるでしょう
その後、ロゴやアイコンなどが実際にXに変更されました。
(画像:X @X)
その後もXのシェア用URLがtwitter.comからx.comに変更されるなど、徐々にTwitter(twitter.com)はX(x.com)へと変化しています。
将来的には、すべてのサービスがX.com上で運用される事になるとの事。
かねてよりマスク氏は、Twitterをスーパーアプリ(あらゆる機能を搭載した”何でもアプリ”)にすると述べており、この動きはその一環です。
2024年5月17日追記:ウェブサイトのURLもtwitter.comからx.comに変更されました。
関連記事:X(Twitter)のURLがついにtwitter.comからx.comに変更される。
なお、X.comがXのURLとして利用されるようになった事から、X.comの現在の所有者はイーロン・マスク氏ではなくXを運営するX Corp.であると考えられますが、X.comのWhois(所有者に関する情報)は代理人の名義を利用して伏せられているため、詳細は分かりません。
X.comの評判
アルファベットの「X」には性的な意味合いもある事から、X.comはまるでアダルトサイトのようだと評価する人もおり、インドネシアでは一時的に禁止されていました。
Twitterの名前がXに、URLがX.comになった事については、Xでも不満の声があがっています。
他のXドメイン
ちなみに、X.comだけでなく、X.aiとX.linkもイーロン・マスク氏(もしくは同氏の関連企業)が保有しており、前者はAIチャットボットのGrokを開発しているxAIの公式ウェブサイト、後者はイーロン・マスク氏のポストへのリダイレクトに利用されています。
まとめ
イーロン・マスク氏は「X」という文字が大好きです。
なお、マスク氏の投稿によれば、本人もなぜXが好きになったのかは分かっていないそうです。