母親の子殺しは罪が軽い?なんと6割が執行猶予に

母親が子供(実子)を殺したニュースを見ていて、「殺人なのにとても罪が軽い」と思った事はありませんか?

もしあるなら、その感覚は正しいです。

実は、女性による殺人の中でも、自分の子供を殺した場合…いわゆる子殺しは特に罪が軽くなる傾向にあり、なんと事件の約6割に執行猶予がついています。

この記事では、女性による殺人についての論文「女性による殺人罪の量刑の変化」から、女性による子殺しに関する情報を紹介します。

女性による子殺しの量刑

以下が女性の殺人事件における量刑です(赤い線で囲まれた範囲が被害者が実子のケース)。

女性による殺人罪被害者の種類別量刑分布

(画像:茂澄遙人 / Twitter *リンク切れ)

被害者が新生児(生後4週間までの子供)の場合の執行猶予率はなんと83.3%となっています。

論文では、女性の実子殺しは被害者(子供)が幼ければ幼いほど罪が軽くなる傾向にあると記されています。

実子殺については,すべてのカテゴリーが軽減的方向に評価されているという点では共通するが,その機能は実子が幼いほど強く,子が成長するにつれてその軽減的評価は弱まっていく

出典:女性による殺人罪の量刑の変化

右側の「懲役・実刑」の項目を見ると、仮に実刑判決が下った場合も、10年以上の懲役にはならない事がわかります。

母親の子殺しは執行猶予?

なぜ人を殺しても罪が軽いのか?

その理由の1つに、母親による子殺しは殺人の中でも特別に扱われてきたという歴史があります。

母親による赤ん坊殺しのうち、一定のものは嬰児殺と呼ばれて特別な取扱いがされてきました。

嬰児殺というのは、未婚の母が私生児を出産、その直後に殺害してしまったとか、育児に自信をなくした母親が産後の不安定な時期において発作的に幼いわが子を殺してしまったケースなどで、嬰児とは0歳児のことを指しています。これは、どこの国でも、殺人罪の中で特別に軽く扱われてきたという特殊な歴史的経緯があります。

日本でも、これまでは、嬰児殺は執行猶予が原則とされてきました。

出典:育児ノイローゼで生後4か月の長男を絞殺→懲役3年、執行猶予4年|幻冬舎

こうした状況に関して、ライターの吉田大助氏は現代ビジネスで以下のように述べています。

子が親を殺す、俗にいう「親殺し」は、昭和後半まで通常の殺人罪よりも量刑が重かった。その後是正されたが、「子殺し」に関しては未だに、旧来の陋習が残っているのかもしれない。通常の殺人よりも、量刑が軽い印象は拭えない。

出典:なぜ親による子どもの虐待死の量刑は、かくも軽いのか | 現代ビジネス

裁判では過去の判例を参考にするので、子殺しの罪の軽さは昔から続いているという事でしょう。

もっと言うと、日本ではそもそも殺人に限らず、親(特に母親)による子どもへの加害行為が軽く扱われています。

国際政治学者の六辻彰二(むつじしょうじ)氏はこう述べています。

現在の日本の法律は、他の先進国と比較して、理不尽な親から子どもを守るうえで十分ではありません。虐待する親に甘い法律は、「親の躾」や「家庭の不可侵」を重視する思考に支えられているといえます。

(中略)

日本の場合、深刻な事態に至る前の段階での刑罰が軽い傾向があります。

児童虐待防止法では、虐待の恐れがある場合、子どもに親が付きまとうことを都道府県知事が禁止でき、違反者には1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。しかし、それ以外の罰則は同法では定められておらず、身体的な暴行などは一般の暴行罪などが適用されます。また、育児放棄などの児童虐待そのものへの刑罰もありません。

これに対して、欧米諸国では死に至る前の段階から、虐待には厳しい刑罰が待っています。

出典:欧米諸国と日本の児童虐待に関する刑罰の比較―児童虐待に甘い国はなぜ生まれるか

他国と比べ、日本では殺人(子殺し)に限らず、児童虐待に対する刑罰が軽い傾向にあるようです。

これは司法だけではなく、社会運動を見ていても感じられます。

例えば、署名サイト・Change.orgでは、子を虐待死させた母親に対して、罪を軽くし、残りの兄弟の子育てをさせるように署名活動が起こった事があります。

豊田市のみつご虐待死事件で、3年6ヶ月の実刑判決が出ました。(2018年1月11日、三つ子の次男を脳挫傷で死なせてしまうという事件です。)

虐待死は許されることではありません。でも、3年6ヶ月は長すぎます。残った二人のお子さんは乳児院に預けられているそうです。服役を終えて出てきた時、二人のお子さんは5歳半です。11ヶ月から5歳半まで乳児院で母親に会えずに過ごすことになります。彼女にとっては、残った2人の子どもに向き合って育てながら罪を償うほうがいいと思います。

だから、実刑判決ではなく、執行猶予付きの判決を求めます。

出典:キャンペーン · 豊田市のみつご虐待死事件の母親が子育てしながら罪を償えるように、執行猶予を求めます! · Change.org

こうした署名活動が起こる状況から鑑みるに、日本では母親による虐待死や殺人(子殺し)の量刑は軽く扱うべきだという考えが強いのかもしれません。

まとめ

命の重さは皆同じはず…

しかし、現実には女性の殺人事件は相手が子供(実子)で、しかも幼ければ幼いほど軽くなる傾向にあります。

罰するだけが正義ではありませんが、これで良いのか疑問が残る所ではないでしょうか?

参考