SNSは、メンタルに悪影響を与える事が複数の研究で判明しています。
アメリカ保健福祉省公衆衛生局が公開した報告書によると、「1日に3時間以上SNSを利用しているとメンタルヘルスの悪化リスクがSNS利用時間の短い子どもの2倍になる」といいます。
SNSの中でもInstagramはメンタルに悪い影響を与える事が知られており、若者の不安と落ち込みを助長していると批判の声が上がっています。
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2024年には、InstagramやTikTokなどが、若者を意図的にSNSに依存させ、心身の健康を損ねたとして裁判まで起こされています。
また、ブラジルでは、X(Twitter)の利用が禁止された際に、Xユーザーの3人に1人が「メンタルヘルスが改善したことに気付いた」と民間調査会社の調査で答えています。
こうした様々な研究や調査から、SNSがメンタルに悪い存在であることは疑う余地のない事実に思えます。
しかし、本当にそうでしょうか?SNSは本当に我々の心に悪影響を与えるのでしょうか?
まだ研究は不十分?
SNSの歴史は浅い為、まだ研究が進んでいません。
その為、SNSとメンタルの関係について、ハッキリとした結論はまだ出せないと考える研究者もいます。
キングス・カレッジ・ロンドンで臨床心理学とリハビリテーションを専門とするティル・ワイクス教授は、「ソーシャルメディアの利用が普及して、メンタルヘルスの障害も一般的になっているので、その間に因果関係を想定するのは容易だ。しかし、そうだと決めつけてはいけない」と述べています。
さらに、カリフォルニア大学アーバイン校の心理学者・情報学者であるキャンディス・L・オジャース氏も、SNSの利用が「十代の若者のうつ病や不安の増加の原因であるかどうかについては、証拠が曖昧である」と述べています。
若者のメンタルヘルスとSNSについての研究はすでに何百人もの研究者が取り組んでいる内容で、オジャース氏によれば、多くのデータで相関関係が見られ、「精神衛生上の問題を抱える若者は、SNSを利用する頻度が高いか健康な若者とは異なる使い方をする傾向がある」といえるものの、「SNSの利用が抑うつ状態を引き起こす」わけではないとのこと。
出典:「若者のメンタルヘルス悪化はSNSのせい」という主張は真の原因への対処法から目をそらしてしまう可能性があるという指摘 – GIGAZINE
一方で、こうした意見に対する反論もあります。
上記オジャーズ氏に名指しで指摘されたジョナサン・ハイト氏は、「オジャース氏の主張は事実にそぐわない」と反論しています。
研究者の間でも、見解が分かれているという事ですね。
余談:ザッカーバーグの見解
ちなみに、FacebookやInstagramなどを運営するMetaでCEOを務めているマーク・ザッカーバーグ氏は、The Vergeのインタビューにおいて、「世の中にある質の高い研究の大半は、ソーシャルメディアと10代のメンタルヘルスの間に広範な規模での因果関係はないことを示唆しています」と話しています。
ザッカーバーグ氏は、SNSがメンタルに悪影響を与えるという主張に対し、懐疑的なようですね(もちろん、彼はSNSを提供しお金を稼いでいる側の人間なので、その点を差し引いて考えるべきでしょう)。
しかし、Instagramが若者の心に悪影響を与えている事は、同社の研究でも明らかになっています。
Facebookは以前から「Instagramが若者にどのような影響を与えるか」という調査を行っており、その結果を社内用の掲示板に投稿していたのですが、海外紙のウォール・ストリート・ジャーナルはこの内部情報を新たに入手。調査結果には「10代の少女の32%がInstagramで不快な思いをしたときに体調を悪くした」「自殺を考えた10代の若者のうち、イギリス人の13%とアメリカ人の6%はInstagramに原因があるとしていた」などの報告が記載されいたとのことです。
出典:Instagramが10代の若者にとって有害だとFacebookは認識し続けていたことが判明 – GIGAZINE
まとめ
SNSが人の心に悪影響を与える研究やデータがあるのは事実です。しかし、まだハッキリと結論を出せる段階ではありません。
SNSの歴史は浅く、信憑性の高い答えを得るには、まだまだ時間がかかるという事です。
なので、SNSによる有害な影響に関する報道は、あくまで参考程度にしましょう。メディアの報道を鵜吞みにして、過剰に恐怖したり、SNSを極端に忌避する必要はありません。
SNSには情報収集や他者との交流など、人生を豊かにしてくれる要素もあります。
例えば、Facebookは人々との交流に活用する事で、気分の上昇につながるといいます。また、LGBT(セクシャルマイノリティ)や障害者など、社会的に疎外されることの多い若者のつながりの場としても機能している事が分かっています。
大切なのは、良い・悪いと単純に考えるのではなく、ルールを設けたり、デジタルデトックスを行うなど、自分のライフスタイルに合わせてSNSと上手く付き合っていくことでしょう。