最近は空港やホテル、商業施設など、公共の様々な場所にスマホ(スマートフォン)やタブレット、パソコンを充電できる無料の充電スポットがありますよね。
公共の充電スポットは外出先でスマホのバッテリーが減ってしまった際などに、とてもありがたい存在です。
しかし、公共のスマホ充電スポットには「ジュースジャッキング」という危険があります。
スマホ充電スポットの危険性
公共の充電スポットを利用すると、悪意のある人間によって「ジュースジャッキング」という攻撃を受ける可能性があります。
ジュースジャッキングとは、公共の充電スポットを悪用してスマホなどの電子機器から個人情報を盗み出したり、マルウェアに感染させたりするサイバー攻撃です。
ジュースジャッキングの被害に遭うとどのような危険があるのか?
代表的なものに以下の2つがあります。
1. データの盗難
スマホの充電に利用されるUSBケーブルは、充電だけでなくデータの転送にも利用されます。
その為、充電スポットにスマホを接続すると、利用者に無断でデータの送受信が行われ、スマホに保存されている個人情報や機密データ等を盗まれるリスクがあります。
また、監視ソフトウェアを仕込まれ、遠隔で情報を収集される可能性もあります。
2. マルウェア感染
充電スポットが不正に改造されている場合、充電中のスマホにマルウェアをインストールされるリスクがあります。
マルウェアによる被害には以下の様なものがあります。
・個人情報を抜き取られたり、情報が流出したりする
・デバイスに保存されているファイルが改ざんされる
・デバイスを勝手にロックされて持ち主でも操作ができなくなる
・外部と勝手に通信を行う
・デバイスを乗っ取られ、サイバー攻撃の「踏み台」として使われる
スマホやタブレットの中でも、iPhoneやiPadはセキュリティ面で非常に優れているので、こうした心配はあまりありません。
しかし、過去にはiPhoneもマルウェアに感染するケースがありました。ですので油断は禁物です。
スマホ充電スポットを安全に使う方法
公共の充電スポットは必ずしも安全とは限りません。
しかし、ジュースジャッキングを恐れて外出先でスマホやタブレットを充電できないのも不便ですよね。
ここから先は、ジュースジャッキングを防ぎつつ、公共の充電スポットを利用する方法を解説します。
1. 信頼できる充電スポットを使用する
公共の充電スポットを利用する際は、信頼できる充電スポットを利用しましょう。
可能であれば、信頼できる場所(例えば、著名なチェーンのカフェや店舗)での充電を選ぶと良いでしょう。信頼できる施設であればセキュリティが施されていることが多いです。
2. コンセントから充電する
ジュースジャッキングを防ぎながらスマホを充電するもっとも簡単な方法は、コンセントから充電する事です。
USBにはデータ転送の機能がありますが、ただの電源ケーブルにはデータ転送機能が無いので安全です。
この方法は、アメリカのFCC(連邦通信委員会)やFBIなど、多くの専門家が推奨している方法です。
空港、ホテル、ショッピングセンターの無料充電ステーションの使用は避けてください。悪意のある者が公共のUSBポートを利用して、デバイスにマルウェアや監視ソフトウェアを導入する方法を見つけ出しています。代わりに、自分の充電器とUSBコードを持ち歩き、電源コンセントを使用してください。
出典:FBI Denver
外出先で充電スポットを使う際は、USBではなくコンセントから充電しましょう。
3. モバイルバッテリーに充電する
充電スポットを利用する際に、自分のスマホやタブレットを直接つないで充電するのではなく、自分のモバイルバッテリーに充電する事で、ジュースジャッキングのリスクを回避できます。
モバイルバッテリーはデータを受け取る事ができず、個人情報などのデータも一切含まれていないので、例え危険な充電スポットに接続してしまったとしてもジュースジャッキングの被害に遭うことはありません。
この方法はセキュリティ対策会社であるAuthentic8のドリュー・パーク氏も推奨しています。
4. 充電専用のUSBケーブルを使う
充電スポットからUSBケーブルを使って直接スマホやタブレットを充電したい場合は、データ転送が出来ない充電専用のUSBケーブルを使えば安全です。
ですが、充電専用のUSBケーブルはあまり売られていません。
充電専用ケーブルはまだ販売はしている。ネットにも、100円ショップにも売っている。ただ探してみるとわかるが、充電専用ケーブルの選択肢は限りなく少ない。しかも何の装飾もない、地味なケーブルだけだ。
筆者もAmazonで探してみましたが、全然ありませんでした。
なので、この方法はオススメしません。しかし、ジュースジャッキング対策としての効果は問題ないので、もし充電専用のケーブルを持っている方や簡単に入手できる方は利用してみると良いでしょう。
5. スマホの警告をしっかり確認する
スマホやタブレットは、コンピュータに接続した際、勝手に同期やデータ転送が行われないよう通知や確認のメッセージが表示されます。
例えば、iPhoneやiPadにはUSBを接続しても、ロックを解除しなければデータの転送等が行われないようにセキュリティ機能が備わっています。
デバイスのロックを解除しないと、アクセサリと通信しなくなり、充電されない場合があります。ただし、USB電源アダプタに接続した場合は、ロックを解除していなくても、デバイスは通常どおり充電されます。
ですので、万が一危険な充電スポットに接続してしまっても、スマホやタブレットの画面をちゃんと確認していれば、データの送受信を未然に防げる場合があります。
逆に言えば、スマホやタブレットの画面に表示される通知や警告をよく確認せずに使っていると、充電スポットがデータを盗もうとした際に、誤ってそのままデータを渡してしまったり、逆に悪質なデータを受け取ってしまう可能性もあります。注意しましょう。
6. USBデータブロッカーを使用
USBデータブロッカー(データ転送を遮断する装置)を使用すると、充電ポートからのデータ転送を防ぎ、安全に充電できます。
USBデータブロッカーは、充電ケーブルの先に付けて充電スポットとつなぐもので、Amazon等で1,000円から2,000円くらいで購入できます。
しかし、後述しますが、ジュースジャッキングのリスクは現実的に高くないので、個人的にはそこまでしなくて良いと思っています。
ジュースジャッキンを心配する必要はない?
公共の充電スポットを使う事で、ジュースジャッキングのリスクがあるのは事実です。
しかし、アメリカのFCCによると、今の所ジュースジャッキングの被害は確認されておらず、この手口がどの程度利用されているかも不明とのことです。
「ジュースジャッキング」は概念実証として技術的に可能であることが示されているものの、FCC(連邦通信委員会)は実際に発生した事例を確認していない。
出典:What is ‘Juice Jacking’ and Tips to Avoid It | Federal Communications Commission
ファクトチェックサイトのSnopesは先のFCCとFBIの警告に対し、以下のように記しています。
犯罪者が公共の USB ポート経由で情報を盗んだりマルウェアをインストールしたりすることは技術的には可能ですが、この行為が広まっていることを示す証拠は提示されていません。
出典:How Serious Is the Security Threat of ‘Juice-Jacking’? | Snopes.com
ニュースサイトのVoxは「これまでにジュースジャッキングが発生した事例は、概念実証のデモンストレーション以外で確認されていない」と指摘しており、「ジュースジャッキングが現実的な脅威となる可能性はかなり低い」と報じています。
「新しい生き方の選択肢」を提案するメディア・Lifehackerは、「実際に攻撃が行われたことは一度もない」とまで明言しています。
また、テクノロジー系ニュースサイトのArs Technicaは、ジュースジャッキングに対する警告や報道を「根拠のないサイバーセキュリティ警告」と位置付け「こうした警告や報道は、脆弱なパスワードの使用やセキュリティアップデートを怠るといった、もっと重大な問題から目をそらさせ、不必要な不安を生じさせる」と分析しています。
セキュリティ研究者のMGことマイク・グローバー氏は、実際に不特定多数の人間にジュースジャッキングを仕掛けるのは非現実的なことであり、「公共の充電ステーションに関して想定すべきリスクとしては、電源の品質やコネクタの破損の方がより重要度が高い」と主張しています。
サイバーセキュリティの専門家であるボブ・ロード氏もジュースジャッキングが「実際に発生しているという証拠がない」とMediumで述べています。
メーカーもしっかり対策している
実際にジュースジャッキングが使用されているという報告が無いとはいえ、スマホやタブレットの開発者が無関心な訳ではありません。
開発者が継続的にOSのセキュリティ強化を行ってきた結果、ジュースジャッキングは最新のOSではほとんど実行不可能な手法になってます。
「ジュースジャッキング」が日常的に使用される機器に悪影響を及ぼした事例は確認されていません。現代のデバイスは、データ転送を開始する前に確認を表示し、制限された充電モードをデフォルトに設定し、接続されたアクセサリを認証します。
ですので、(上記の対策が無駄という訳では無いですが)ジュースジャッキングに対して過剰に恐れる必要はありません。
まとめ
公共の充電スポットを利用すると、ジュースジャッキングにより自身のスマホやタブレットが危険に晒される可能性があります。
IBMのセキュリティ専門家であるCaleb Barlow氏は、「公衆のUSB充電ポートにスマホをつなぐのは、道に落ちている歯ブラシで歯を磨くようなものだ。どんな結果が待っているかは予測不能だ」と述べています。
また、FBIも充電スポットについて「空港やホテルにある無料の充電ステーションは使わない方がいい」と警告しています。
しかし、理論上はあり得るものの、実際にジュースジャッキングが行われた事件は存在せず、現実的な脅威とは考えられません。
なので、神経質に対策を考えたり、充電スポットを利用する際に不安に思う必要は無いと言えるでしょう。
信頼できない充電スポットを避けたり、スマホの通知をちゃんと確認するようにしていれば問題ありません。
