インターネットを普通に使っている分には無縁の「ダークウェブ」とは何なのか?
ダークウェブの概要や安全に閲覧する方法を解説します。
ダークウェブとは?
ダークウェブとは、普通の方法ではアクセスできないウェブサイトの総称です。
それらのウェブサイトには、ユーザーの匿名性とデータセキュリティのための追加の保護が備わっており、アクセスするにはTorやI2Pといった特別なソフトウェアが必要です。
一般的なサイトと違い、GoogleやYahoo!で検索しても出てきませんし、SafariやGoogle Chromeといったブラウザでは閲覧する事ができません。
インターネット上のウェブサイトには、誰でもアクセスできるサーフェスウェブと会員登録やログインをしなければ閲覧できないディープウェブが存在します。ダークウェブはディープウェブの一部ですが、その割合は0.01%未満と考えられています。
ちなみに、似た単語である「ダークネット」とは別物です。
誰が利用しているのか?何のために存在するのか?
ダークウェブは匿名性が高く、一般的なウェブサイトからは隔離されているので、政府や法執行機関に隠れてウェブサイトを運営・閲覧できる場所です。
その為、ダークウェブにはハッキングツール、麻薬、偽造パスポート、海賊版、児童ポルノなど、違法なサービスやコンテンツを提供するウェブサイトが多くあります。
企業のデータベース等から盗まれた個人情報が取引されたり、公開されている事もあります。
2024年に起こったKADOKAWAへのサイバー攻撃によって流出した個人情報もダークウェブ上で公開されていました。
近年増加しているランサムウェアの被害により、企業が持つ個人情報がサイバー犯罪者によって盗まれ、ダークウェブに公開されるケースが増えています。
2024年6月にKADOKAWAがランサムウェア攻撃を受けた際には、ドワンゴの契約社員・派遣社員・アルバイト・一部退職者を含む全従業員の個人情報や、関係会社の一部従業員の個人情報、ドワンゴが提供する「楽曲収益化サービス」を利用していたクリエイターの一部の個人情報などがダークウェブ上に流出していたことが判明しています。
出典:無料でGoogleのダークウェブ監視機能を2024年7月下旬から全ユーザーが利用可能に、自分の個人情報が闇市場にあるかどうか安全に確認 – GIGAZINE
一方で、人権を訴える人々が、自身のプライバシーを守りながら安全に活動できる場所でもあります。
例えば、独裁者を批判する活動家、プライバシー保護が必要な内部告発者、そうした人々を支援するジャーナリストなどにとってダークウェブは重要な存在です。
また、政府自身も機密情報の共有などの為にダークウェブを利用する事があります。
例えば、アメリカ政府はテロや国際犯罪に関する通報を一般市民から受け付ける「正義への報酬プログラム」を展開しており、通報を行う際はTorを利用してダークウェブ上にあるウェブサイトから通報を行うよう市民に推奨しています。
こうした例から分かるように、良くも悪くもダークウェブは文字通りダーク(=闇)という訳です。
大抵の人間は違法行為を行う犯罪者でもなければ、政府を批判する活動家でもないので、あまり縁は無いでしょう。
しかし、実は誰でも無料で簡単にアクセスする事ができます。難しい手法や不正行為は一切必要ありません(後述)。
ダークウェブは合法
ダークウェブそれ自体は、アクセスが困難なウェブサイトに過ぎません。
ですから、ウェブサイトの製作や閲覧、情報発信が合法な国なら、ダークウェブの存在も当然合法です。
もちろん日本でも合法です。閲覧はもちろん、ダークウェブのウェブサイトを作るのもOKです。
しかし、その性質上、違法なウェブサイトが存在するのは先述通りです。なので安易にダークウェブを閲覧するのはおすすめしません。
ダークウェブにアクセスする方法
ダークウェブには様々なものがありますが、中でも特に有名で一般的なのが「Tor(トーア)」です。

Torは「The Onion Router(ジ・オニオン・ルーター)」の略で、Onion(玉ねぎ)の層の様に、何層にも暗号化が施された通信経路を秘匿する通信技術です。
Torを利用すると、IPアドレスを相手に知られる事なくウェブサイトにアクセスする事ができます。
ダークウェブには、そんなTorでしかアクセスできないウェブサイトが多数存在します。
それらのサイトは独裁国家による検閲や盗聴をも回避して閲覧できるのが大きな特徴です。
Torを利用するには?
Torを利用する方法はとても簡単です。
単にTorに対応したブラウザを利用すればいいだけです。
Torに対応したブラウザには、Tor公式が提供している「Tor Browser」があります。
広告ブロックを標準搭載したブラウザ「Brave」もTorでの接続に対応していますが、匿名性は完璧ではないので注意しましょう。完璧な匿名性が必要な場合は、Tor Browserを使う事を強くオススメします。

ダークウェブを閲覧する方法
Torはあくまで通信技術です。
Tor BrowserやBraveを利用しても、それだけでダークウェブが勝手に表示されることはありません。
一般的なウェブサイトにアクセスする際に、GoogleやYahoo!で検索したり、ブラウザにURLを入力してウェブサイトを開くように、ダークウェブでも、目的とするウェブサイトを自ら探してアクセスする必要があります。
ダークウェブのURL
Torでのみアクセスできるダークウェブのサイトは、独自のドメイン(URL)を持っています。
意味のない英数字が続くやたら長いURLで、末尾が「.onion」となっているのが特徴です。
例えば、イギリスの公共ニュースサイトであるBBCのTor版は以下のようなURLです。
参考:www.bbcweb3hytmzhn5d532owbu6oqadra5z3ar726vq5kgwwn6aucdccrad.onion
ダークウェブの検索エンジン
Googleのように、ダークウェブ内を検索できる検索エンジンも存在します。
例えば、匿名性重視の検索エンジンであるDuckDuckGoには、ダークウェブに対応したTor版のウェブサイトが存在します。
参考:duckduckgogg42xjoc72x3sjasowoarfbgcmvfimaftt6twagswzczad.onion
ダークウェブのリンク集
昔存在した「Yahoo!カテゴリ」のダークウェブ版のようなリンク集が存在します。
有名なのは「The Hidden Wiki」と呼ばれるものです。
以下のページはThe Hidden Wikiの解説ページです。
どちらのサイトも日本語で確認できます。
ダークウェブ上のウェブサイト
ダークウェブには多くのウェブサイトがあります。
先述通り、違法なものから、著名なウェブサイトのダークウェブ版までその種類は様々です。
ダークウェブ上のウェブサイトは、基本的に通常の一般的なウェブサイトと変わりませんが、いささか粗雑であり、例えるなら一昔前の文字中心のウェブサイトのようです。
Torなどを介した通信は、通常の通信と比べて通信速度が非常に遅くなります。ゲームなど出来たものではありません。動画サイトをスムーズに閲覧する事も困難です。
その上、Torの利用者は安全の為にJavaScript等をオフにしてウェブサイトを閲覧する事があります。そうした事情に対応する為、低速の通信に対応し、機能も少ない一昔前のウェブサイトのような作りをしているという訳です。
Wikipediaには、Torでのみアクセスできるウェブサイトのリスト(URLの末尾が.Onionで終わるウェブサイト)のリストがあるので、チェックしてみるといいでしょう。
ダークウェブで購入できるモノ
ダークウェブでは、様々なコンテンツやサービス、物が販売されています。
中には以下のような違法なものもあります。
- クレジットカード番号や銀行口座など
- 情報漏洩等で集められた個人情報
- アヘン、コカイン、MDMA、大麻といった違法ドラッグ
- 不正に入手した火器などの武器
- ランサムウェアなどのハッキングツールやサービス
- 児童ポルノなどの非合法なポルノ
米国のCheck Point Software Technologiesによると、最近では大人気のAIチャットボットであるChatGPTの有料アカウントが多数売りに出されていると言います。無論、それらのアカウントは正規品ではなく、他者から盗んだアカウントです(他者のメールアドレスとパスワードを販売しているという事)。
倫理的にも功利的にもダークウェブで買い物をするべきではありません。
真っ当な商品を匿名の販売者から購入する理由はありません(問題のある商品を購入すべきでないのは言わずもがなです)。
闇市では仮想通貨が利用される
こうしたダークウェブ上の”闇市”では、ビットコインなどの仮想通貨(暗号通貨)を利用して取引をする事が多いです。仮想通貨であれば世界中の人と簡単にやり取り出来るためです。
本人確認等が不要で誰でも匿名性を維持したまま利用できるのも仮想通貨が闇市で利用される理由です。
しかし、仮想通貨は身元を伏せたまま利用できるお金という認識は間違いです。ほとんどの仮想通貨は取引の記録が誰でも分かる形でブロックチェーン上に記録されますから、それを辿っていけば誰が取引に関与したか分かります。仮想通貨を取引所で現金と交換すれば、そこがリアルと繋がる点になります。
事実、2018年には児童ポルノサイトの利用者が、支払いにビットコインを利用していたことからブロックチェーン(ビットコインの利用履歴)を追跡されて逮捕されています。
まとめ
ダークウェブは興味深いものですが、犯罪者や活動家でもない限り、普段の生活で必要とする事は無いでしょう。
違法なサイトや危険なサイトも存在しますから、ダークウェブを覗く際はよく注意し、深く関わらない事をオススメします。
間違っても違法行為に手を染めてはいけません。例えダークウェブ上であっても悪事はバレます。
ユーロポール(欧州刑事警察機構)は2025年に児童ポルノサイト「KidFlix」を摘発した際、「オンラインの世界は匿名ではない」と警告しています。