Tor(トーア)は通信経路を秘匿してインターネットに接続できる通信技術です。
これを利用する事で、相手に自身のIPアドレス等を知られる事なくウェブサイトを閲覧したり、メールを送信したりする事が可能です。
公式サイト:Tor Project | オンラインでの匿名性を実現
Torとは?
Torは「The Onion Router(ジ・オニオン・ルーター)」の略で、Onion(玉ねぎ)の層の様に、何層にも暗号化を施すことで通信経路を秘匿する通信技術です。
インターネットに接続するまでに、3つのリレー(サーバー)を経由することで、IPアドレス等を相手のウェブサイト側に分からないようにすることができます。
通常、我々がウェブサイトを閲覧する際は以下のような通信が行われます。
「パソコンやスマホ」→「ウェブサイト」
Torを利用すると、間に3つのリレーを挟んで通信を行います。
「パソコンやスマホ」→「ガードリレー」→「中間リレー」→「出口リレー」→「ウェブサイト」
ウェブサイト側の人間がどれだけ通信内容を分析しても、分かるのは「出口リレー」の情報だけであり、閲覧者の情報は分からないという訳です。
さらに、各リレーを通るデータは暗号化されている為、各リレーの管理人が通信内容を把握する事も出来ません。分かるのは送信元と受信元(中間リレーであればガードリレーと出口リレーの情報だけ)といった最低限の情報だけです。
ちなみに、リレーはTorの理念に賛同する人々や企業によってボランティアで運営されており、全世界に6000台を超えるリレーが存在しています。
その性質上、リレーを運営しているボランティアは法執行機関から目を付けられやすく、実際にボランティアに対して家宅捜索などが行われています。
参考:匿名通信システム「Tor」に協力する団体のオフィス兼自宅が警察の家宅捜索を受けて役員が交代を要請 – GIGAZINE
Torの匿名性について
Torを利用した通信は匿名性が高いため、当局や通信会社に通信内容を監視されたくない方やIPアドレスを記録されることなく匿名でウェブサイトにアクセスしたい人々に広く使用されています。
また、政府の検閲(通信のブロック)を回避してインターネットに接続する際にも利用されます。
一部の国や地域では、体制の維持、反体制派の弾圧のために政府がインターネットを検閲したり、通信経路を遮断したりしています。政府にとって不都合な通信の発信者が特定されると、その発信者は逮捕・拘束される危険性があります。そのような国々でジャーナリストや民主化運動の活動家が安全に通信を行うためのシステムとしてTorは利用されています。
ただし、Torはあくまで通信経路を匿名化するものであり、通信内容の秘匿化を行うものではありません。
通信内容を秘匿するには、別途VPNを使ったり、HTTPSに対応したウェブサイトを利用したり、個人情報の特定につながる動作(例えばSNSにログインするなど)をしないように注意しましょう。
また、「アップデートを行わない」「ブラウザのバグ」などにより、匿名性が無効化される場合もあるので注意しましょう。
Torの利用者
Torを利用すれば、IPアドレスを秘匿し、政府による検閲や情報漏洩等を防ぐことが出来るため、政府機関や活動家、プライバシーを重視する個人など様々な人に利用されています。
一方で、その匿名性の高さから、犯罪者が悪用する事もあります。
日本では2012年に発生した「パソコン遠隔操作事件」で悪用されたケースが有名です。
パソコン遠隔操作事件とは、2012年に日本で発生したサイバー犯罪です。インターネット掲示板を介して、少なくとも5人が所有するPCに対して不正な指令を与え、所有者の認識しないところでPCを操り、少なくとも計13件の襲撃・殺害予告を行いました。
真犯人はTorを利用して複数の海外のサーバーを経由して掲示板にアクセスし、自分のIPアドレスを隠蔽していたため、捜査は難航。PCを利用された4人が誤認逮捕される事態となりました。
Torを利用するには?
Torを利用する方法はいくつかありますが、簡単なのはTorに対応したブラウザを利用する事です。
Torが公式に提供している「Tor Browser」を利用すれば、そのブラウザによる通信は全てTorが利用されます。
関連記事:強力な匿名性を実現するブラウザ「Tor Browser」とは?
また、Torゲートウェイを利用することで、本来Tor経由でなければ閲覧できないダークウェブ上のコンテンツを、普通のブラウザだけで閲覧する事が可能です。
Torの歴史
Torの元となったのは匿名通信技術の「オニオンルーティング」です。これは1995年に米国海軍調査研究所によって開発されました。諜報活動や捜査、情報源とのやり取りなどを秘匿する為です。
その後、2003年10月にオープンソースのソフトウェアとしてリリースされたのが第三世代のオニオンルーティングである「Tor」です。
現在は米国の非営利団体「Tor Project」によって開発が行われています。
様々な企業や財団、行政機関などがスポンサーとなってTorの開発を支えています。
スノーデンもオススメ
アメリカ政府の監視システムや諜報活動を告発したエドワード・スノーデン氏も、プライバシーを保護するため、通信経路をTorで秘匿することをオススメしています。
スノーデン氏の暴露以降、アメリカのジャーナリストや情報セキュリティ関係者のコミュニティでは、ネット上の匿名性確保を強調する人が増えた。そして、そうしたセミナーで話題に上るのは、世界的に知られる無料の匿名ソフト「Tor(トーア)」だ。スノーデン氏も、14年3月にテキサス州のイベントにテレビ通信で参加し、監視の目を避けるためにTorを使うべきだと語っている(10月にはハーバード大学でも公開ビデオ討論に参加している)。NSAリークの前からTor支持者だったスノーデン氏は、ハワイ在住時に、Torの利用を推進する運動に参加していたという話もある。また、今もパソコンにもTorのステッカーを貼付けている。
また、アメリカの政府関係者もTorを使っています。