インターネット上で「本を読むとストレスレベルが68%も軽減する」という情報を見たことはありませんか?
この情報は様々なサイトやSNS等で取り上げられています。中には大手メディアにも…。
ですが、実は信ぴょう性に乏しい情報です。
読書は最も効果的なストレス解消?
「本を読むとストレスレベルが68%も軽減する」という話は、イギリスの新聞であるTelegraph(テレグラフ)が2009年にウェブサイトで公開した「Reading ‘can help reduce stress’」という記事が元になっています。
この記事ではサセックス大学のコンサルタント会社であるマインドラボが行った研究が紹介されており、それが「本を読むとストレスレベルが68%も軽減する」という話です。
サセックス大学のコンサルタント会社マインドラボ・インターナショナルがボランティアのグループを対象に実施した。
さまざまなテストと運動を通じてストレスレベルと心拍数が増加した後、さまざまな伝統的なリラクゼーション法でテストされました。
認知神経心理学者のデイビッド・ルイス博士は、読書が最も効果的で、ストレスレベルを68%低下させたと述べた。
被験者は、心拍数を下げ、筋肉の緊張を和らげるために、6分間黙って読書するだけでよいことがわかった。実際、被験者のストレスレベルは読書を始める前よりも低くなった。
音楽を聴くと血中濃度は61パーセント低下し、お茶やコーヒーを飲むと54パーセント低下し、散歩をすると42パーセント低下した。
ビデオゲームをプレイすると、心拍数は最高値から21%低下しましたが、それでもボランティアの心拍数は開始時より高くなりました。
このテストを実施したルイス博士は、「本に没頭するのは究極のリラクゼーションです」と語った。
これだけ読むと、「本を読むとストレスレベルが68%も軽減する」という研究結果は正しいものに思えます。
しかし、研究内容に問題がありました。それは、参加者が著しく少ない事です。
信ぴょう性に乏しい点
1991年に設立されたコンサルティング、トレーニング、研究チームであるIMA(Information Management Associates)の調査によれば、この研究の参加者は熱心な読書家である16人のボランティアとのこと。
また、ストレス解消法として調査された内容も紹介されている5種類(読書、散歩、音楽を聴く、お茶やコーヒーを飲む、テレビゲーム)と乏しいものでした。
さらに、Telegraphの記事にもありますが、この調査はスニッカーズ等で知られるマース社が、自社の商品である「ギャラクシー・チョコレート」の販促(100万冊の本を無料配布するキャンペーン)を行うために依頼したものです。
以上のことから、「本を読むとストレスレベルが68%も軽減する」という研究結果は、決してデマや間違いではないものの、決して信ぴょう性が高い研究とは言えません。
この研究を行った認知神経心理学者のデイヴィッド・ルイス博士は「本に没頭するのは究極のリラクゼーションです」と語っていますが、それは明らかに誇大な主張です。
IMAはこの研究について、「この結果は確かに興味深いもので、はるかに大規模な調査研究につながる予備的なパイロット研究の基礎として役立つ可能性がある。」と評価しつつも、このような根拠の弱い研究結果を発表する大学やそれを報じるメディアを批判しています。
まとめ
サセックス大学のデイヴィッド・ルイス博士が発表した「本を読むとストレスレベルが68%も軽減する」という研究結果は、デマや間違いではありませんが、信ぴょう性に乏しいものです。
「あくまで参考程度の話」だと考えましょう。