Gmailを生み出したGoogleの働き方「20%ルール」の本質はリスクヘッジだ!

Googleには「20%ルール」という働き方のルールが存在します

これは、業務時間の20%を、「普段の業務とは異なる業務(Google においては新規事業立案)」に費やしてよいという制度です。

Google ニュースやGoogle マップ、Gmailはこの20%ルールから生まれました。

「20%ルール」の本質はリスクヘッジ

Googleの「20%ルール」は、新しい魅力的な製品やサービスを生み出すための意欲的な取り組みに思えます。

しかし、実際には逆で、その本質は「リスクヘッジ」にあるようです。

株式会社メタップスの創業者である佐藤航陽氏の著書「未来に先回りする思考法」の中に、以下のような一節があります。

この仕組みは「リスクヘッジ」のためのものなのだ、と。Googleを率いるような優れた経営者も、いつも正しい決断をし続けられるとは限りません。企業が大きくなればなるほど、創業者たちでさえすべての市場を正しく把握することは難しくなってきます。ネットの市場は変化が速いので、トップが意思決定をひとつでも間違えば、途端に時代に乗り遅れるリスクがあります。

「だから、数万人いる社員の業務時間の20%をそのリスクヘッジにあてているんだ」と、彼は話してくれました。もし仮に創業者の意思決定が間違っていたとしても、数万人の社員の20%の時間を費やしたプロジェクトの中に正しい選択があれば、企業は存続できます。企業の80%のリソースを経営陣の意思決定どおりの仕事に費やし、残りの20%のリソースを社員の意思決定に任せる。これにより、企業全体がおかしな方向にならないようにバランスをとっているのです。

この仕組みは、Googleの経営陣ですらも常に正しい意思決定をすることは不可能だ、という前提に立ってつくられています。

どれだけ多くの経験を積んでも、この世界の「不確実性」からは逃れることができないのならば、いっそのことそのリスクも理解した上で組織をつくるという理詰めの選択の結果が、あの「20%ルール」なのです。この話には衝撃を受けました。

不確実性とリスクの本質を分析した『ブラック・スワン』の著書ナシーム・ニコラス・タレブは、投資について、資金の85~90%を確実性の高いものに投資し、残りの10~15%はあえて投機的な、不確実性の高いものに投資してバランスを取れと語っています。

このGoogleの20%ルールも、「人間に不確実性は制御できない」という同じ価値観のもとに設計されています。

この考え方において最もリスクのある選択とは、一見すると合理的に思える選択肢にすべてを委ね、一切のリスクと不確実性を排除しようとすることです。リスクや不確実性を完全に排除する考えそのものが最大のリスクを生み出します。一方で、本当に合理的な判断とは、自分が完全に合理的な選択ができるという考えを諦めて、不確実性を受け入れつつ、意思決定を行うことです。

出典:未来に先回りする思考法

まとめ

筆者は、Googleの20%ルールは革新的な製品やサービスを作るための革新的な取り組みなのだと思っていました。

しかし、実際はむしろ逆で、Googleの進む方向が間違えていた時に備えて、バックアッププランを用意するための言わば保守的なアイデアだったのです。

「不確実な要素やリスクを全て無くすことはできない。むしろ、不確実性やリスクがあることも込みで働き方を考える。」

個人の生活や仕事、人生にも応用できそうな考え方ですね。