スティーブ・ジョブズ氏は仲間と共にAppleを起業し、成功させました。
しかし、こだわりの強い性格が災いして、周囲と衝突し、自らが起業したAppleを追放されました。
その後、Appleは倒産寸前に陥ります。iPhoneやMacが大人気の今では信じられない事ですが、当時のAppleは非常に不調だったのです。
そんな中で、CEOに復帰しAppleを立て直したのがスティーブ・ジョブズ氏です。
彼がAppleを復活させるために取った戦略とはどのようなものだったのでしょうか?
それはとてもシンプルな考え方でした。
選択と集中
1997年、倒産寸前だったAppleに創業者のスティーブ・ジョブズ氏が復帰したとき、Appleはパソコン以外にも様々な製品を作っていました。
当時のAppleはパソコンだけでなく、プリンター、サーバー、モニター、デジタルカメラなど様々な製品を扱っていたのです(iPodやiPhoneはまだ存在しませんでした)。
復帰したジョブズ氏は、これらの分野を全て廃止し、パソコン…すなわちMac(当時の名称は「マッキントッシュ」)だけに集中すると決めました。
さらに、Macだけでも10種類ほどありましたが、それらを7割廃止しました。
無駄を排し、リソースを集中して作ったiMacは大成功を納め、Appleの復活につながりました。
かつてApple Japanでマーケティングコミュニケーションを担った河南順一氏は、「コア事業だけを残し、ほかの事業から撤退する決断をした。レガシーを捨てて変革を求めたことが、復活につながった」と述べています。
そう、ジョブズ氏がAppleを再生させたシンプルな考え方とは、「選択と集中」なのです。
(初代iMacを抱えて座るスティーブ・ジョブズ氏。画像:AP/Aflo via WIRED)
ジョブズのアドバイス
スティーブ・ジョブズ氏は、後年この考え方を他者にも伝えています。
2007年秋、Yahoo!のCEOに就いたジェリー・ヤン氏は、ジョブズ氏に経営のアドバイスを求めます。
この依頼を受け、ジョブズ氏はYahoo!の幹部らに「多くの企業が1年以内に達成したいことを10個リストアップするが、賢い会社はその10個から3つか4つに絞る」とアドバイスしました。
さらに、「私のやり方はこうだ。紙を1枚用意し、『私の会社が来年たった1つのことしかできないとしたら、それは何か?』と問う。そして文字通り、他のことはすべてやめるんだ」と続けました。
また、2011年にはGoogleのラリー・ペイジ氏もジョブズ氏にアドバイスを求めましたが、その際もジョブズ氏は「集中すること」について強調したといいます。
ジョブズ氏が経営において常に「選択と集中」を大事にしていたことが伺えますね。
まとめ
スティーブ・ジョブズ氏がAppleを再建し、その後にiPod、iPhone、iCloudといった素晴らしい製品を提供できた背景には、「選択と集中」という考え方がありました。
この考え方は、経営において非常に重要と言われています。
近年では、グローバル競争で生き残るため、不振事業の売却や企業統合を進め、得意分野に集中する企業も現れています。日本市場の成熟化とともに選択と集中がより重要となっています。
みなさんも、経営に限らず、なにか行き詰まりを感じたときは、「選択と集中」を行ってみてはいかがでしょうか?
余談
かつてAppleでCEOを務めていたジョン・スカリー氏は、ジョブズの自宅について、「ジョブズの部屋はシンプルで、家具がほとんどなかった」と述べています。
選択と集中により、物事をシンプルに保つことは、ビジネス上のノウハウだけでなくジョブズ氏の生き様そのものなのかもしれません。