「取りかかるのが難しい」「やればすぐに終わると分かっているが面倒」…などと感じて、ついついタスク(やるべき事)を先延ばしにしていませんか?
そんな方の為に、先延ばし癖を治す「2分間ルール」を紹介します。
2分間ルール
先延ばしを防ぐには、タスクを2分以内に実行できる量に分解するのがオススメであると、生産性の専門家でありベストセラー作家でもあるジェームズ・クリアー氏が著書の「複利で伸びる1つの習慣」で述べています。
例えば、以下のような具合です。
- 本を読む → 本を1ページ読む
- レポートを書く → 紙とペンを用意する
- ウォーキングをする → ランニングシューズを履く
- 腕立て伏せを100回する → 腕立て伏せを1回する
- 野菜をたくさん食べる → リンゴを1個食べる
- 勉強をする → ノートにざっと目を通す
- プログラムを作る → 関数を書く
- 洗濯物を畳む → 靴下を畳む
タスクを2分間で終わる量になるまで分解することで、物事に取り組むハードルを下げることができます。
これが2分間ルールです。
2分間ルールを実践する事で、先延ばし癖を克服し、「行動を開始する」という基本的なスキルを身に着けることが可能になるとクリアー氏は述べています。
あなたが先延ばしにするタスクのほとんどは、実際には難しいことではありません。あなたにはそれを達成するための才能とスキルがあるのです。ただ、何らかの理由で始めることを避けているだけです。
2 分間ルールは、簡単に行動を開始できるため「ノー」と言えず、先延ばしや怠惰を克服します。
ダラム大学の心理学教授であるフーシャ・シロワ氏も、先延ばし対策の1つとしてタスク分割を提案しています。
Sirois氏はタスクを先延ばしにしない方法として「目の前のタスクに圧倒されそうになったら一歩引いて、そのタスクがどんな感情を引き起こしたのか、なぜそのタスクを避けたいのかを自分で評価する」ことを勧めています。具体的な方法として、大学のエッセイや仕事上の課題の場合、その課題の不明な点を明確にしたり、小さな課題に分割したりすることが重要とのこと。
2分間ルールはADHDにも効果的
2分間ルールは先延ばしをしがちなADHDの方でも有効であると専門家は述べています。
先延ばし癖の強い人は、ある目標や作業を目の前にすると、「果たして達成できるのか」という漠然とした不安や「興味もないしやりたくない」という心理的な抵抗感を抱きます。
しかし、そうした乗り越え難い負の感情は、タスク全体を小さく分割することでハードルがぐっと低くなります。
例えば、散らかった部屋を掃除する場合、一度に片付けるのではなく、「今日は机の上だけ、明日はクローゼットの中だけ」というようにタスクを分割してみるのです。
そうするとやるべきことが明確になり、作業時間も短くて済むので、集中力が十分に持続し、先延ばしが起こりにくくなります。
実際にADHDによる先延ばし癖に苦しんでいた自営業者のローリー・エロー氏は、先延ばし癖を克服する為にタスクの細分化を取り入れています。
エロー氏は仕事は先延ばしにしてしまうが、テレビゲームには集中して取り組めることに注目し、その理由が「フィードバックループが短時間で繰り返され、脳に快感を与えている事」にあると気付きました。
例えば、シューティングゲームでは、「照準→射撃→命中 or ミス」というシンプルなループ(繰り返し)が短時間で何度も行われ、それに対して都度フィードバック(敵が倒れる演出やスコアのカウント)が得られます。
このフィードバックループを実生活でも再現する為に、エロー氏は「タスクを細分化し、それを付箋に記し、終わったら付箋をぐちゃぐちゃにして透明の瓶に捨てる」という手法を考案します。
「行動する→付箋を捨てる」というループを短時間で繰り返す事で、エロー氏は集中力を高めて生産性を2倍~3倍に向上する事ができたといいます。
ループを短時間で繰り返す為には、一つ一つのタスクが短時間で片付ける必要があるので、タスクの細分化はとても重要です(「家の掃除」を一日に何度も繰り返すことはできませんよね)。
エロー氏がADHDの先延ばし癖を防ぐために考案した”付箋ライフハック“は、2分間ルールと基本的な面で共通しています。
2分間ルールで新しい習慣を身に着ける
クリアー氏は2分間ルールを使う事で、日々の面倒なタスクを消化するだけでなく、新しい習慣を身に着ける事も可能であると述べています。
新しい習慣を始める上で最も重要なのは、始めることです。最初だけではなく、毎回です。重要なのはパフォーマンスではなく、一貫して行動することです。これは特に最初のうちは当てはまります。後でパフォーマンスを向上させる時間は十分にあるからです。
例えば、「毎日ウォーキングをする」という習慣を身に着けるのは大変です。
しかし、2分間ルールを適用し、「毎日ランニングシューズを履く」という目標に置き換える事で、「毎日ウォーキングをする」という習慣を身に着けやすくなります。
同様に、「読書を習慣にしたい」という場合は、「1日1回は本を開く」と目標を置き換える事で、読書の習慣を身に着けるハードルが下がります。
大切なのは徹底して実行するハードルを下げる事です。
クリアー氏は「あなたが読む記事、聞くポッドキャスト、見るビデオのほとんどで問題となるのは、情報を消費するだけで、それを実践しないということです。」と述べています。
2分間ルールのルーツ「GTD」
2分間ルールは、コンサルタントのデビッド・アレン氏が提唱する生産性を高めるためのテクニック「GTD(Getting Things Done)」の一部です。
GTDで重要なのは「頭の中を空にすること」です。そこで、GTDでは最初に頭の中にある全ての「やるべきこと」や「気になっていること」を書き出します。
そして、書き出した内容を具体的に予定やスケジュールに落とし込んでいくのですが、その際に2分以内でできる事であれば、予定に組み込まず、その場でやってしまうというのが「2分間ルール」です。
クリアー氏の「タスクを2分以内に出来ることに分割して、先延ばし癖を無くす」というアイデアは、GTDの2分間ルールを応用しています。
関連記事:【生産性向上】2分以内に終わるタスクは予定に入れずその場で済ませよ【GTD】
困難は分割せよ
タスクを分割する事の重要性は、歴史上の人物も説いています。
フォード・モーターを創業したヘンリー・フォードは、「仕事を細かく分割してしまえば、特に難しいことなどない」と1934年に述べています。
さらに、フランスの哲学者であるルネ・デカルトも、著書「方法序説」において「困難は分割せよ」と述べています。
難しいタスクは分割して取り組む…これはタスク管理の”真理”なのかもしれませんね。
※余談ですが、デカルトの著書には「困難は分割せよ」という言葉はなく、実際は「わたしが検討する難問の1つ1つを、できるだけ多くの、しかも問題をよりよく解くために必要なだけの小部分に分割すること。」と述べていたそうです。
まとめ
先延ばし癖は、タスクの消化が遅れるというだけでなく、ストレスが増大し、心身に悪影響を及ぼす可能性もあります。
先延ばし癖が深刻になると、自尊心や幸福度が低下すると同時に罪悪感やストレスが増大して、不安症やうつ病につながる恐れもあります。
皆さんも、やるべき事を先延ばしにしてしまっている時は、やる気が出る”サイズ”になるまでタスクを細分化してみてはいかがでしょうか?
2分間ルールを実践し、先延ばしを克服して幸せな人生を送りましょう!