強力な匿名性を実現し、プライバシーを保護しながらネットを見ることができるブラウザ「Tor Browser」を紹介します。
公式サイト:Tor Project | オンラインでの匿名性を実現
Tor Browserとは?
Tor Browser(トーア・ブラウザー)はノードと呼ばれる複数のサーバーを経由してウェブサイトにアクセスするブラウザです。
複数のサーバーを経由するため、ウェブサイト側からは通信元(ネットを見ているユーザー)を特定する事が不可能という仕組みです(あくまで通信の話です。通信先のサイトで個人情報を書き込む等すれば、当然バレます)。
当初の目的は海軍が通信を秘匿するためだったと言われており、初期の開発にはアメリカ海軍調査研究所などが関わる政府主導のプロジェクトでした。
なお、「Tor」と呼ぶこともありますが、厳密には「Tor」は通信元を秘匿するための一連のテクノロジーの事で、Tor BrowserはTorを利用してウェブサイトの閲覧ができるブラウザの事です。
ですから、「Tor」と「Tor Browser」は別ものだという事です。
関連記事:匿名通信システム「Tor」とは?
Tor Browserを入手する
Tor Browserは以下4つのOS向けに提供されています。
- Windows
- macOS
- Linux
- Android
これらは以下のダウンロードページから入手できます。
また、公式にはiOS版は用意されていませんが、「Onion Browser」を使う事でiPhone等からもTorを利用する事ができます。こちらはTorの公式サイトから紹介されているものなので実質公認です。
※Tor Browserを入手する際は、必ず公式サイトからダウンロードしましょう。公式サイト以外で配布されているものは、マルウェアの混入などの可能性があり危険です。
Tor Browserの特徴
Tor Browserの特徴(メリット・デメリット)は以下の通りです。
世界最高峰の匿名性
通信のプライバシー保護を考えた場合、Tor Browserに勝るブラウザは存在しないと言っていいでしょう。
通信元(ネットを見ているユーザー)を匿名化する点で言えば、Tor Browserは最高の選択肢です。
(幸い日本は違いますが)政府や警察による検閲や盗聴が厳しい国家でも安心して利用できます。
ただし、Tor Browserはあくまで通信経路を匿名化するものであり、通信内容の秘匿化を行うものではないので注意しましょう。
Torは送信元のIPアドレスや位置情報を保護するものであって、SSLやTLS(インターネット上で情報を暗号化して送受信するプロトコル)のように通信内容を保護するものではありません。Torネットワークを構成するサーバーが悪意のある管理者によって運用されていた場合、通信内容が傍受される可能性があります。
テロや国際犯罪に関する通報をウェブサイトから受け付けているアメリカの「正義への報酬プログラム」では、安全の為にTor BrowserとVPNを併用して通報する事を推奨しています。
検索エンジンはDuckDuckGo
Tor Browserのデフォルト検索エンジンは、匿名性重視の検索エンジンである「DuckDuckGo」です。
Googleと違い、ユーザーの個人情報を収集しないので安心です。
また、より匿名性が強化されたTor版のDuckDuckGoも用意されています。
参考:duckduckgogg42xjoc72x3sjasowoarfbgcmvfimaftt6twagswzczad.onion(Torでのみアクセスできます。)
.onionサイトにアクセスできる
世の中にはURLの末尾が「.onion」となっているウェブサイトがあります。
これはダークウェブ上に存在する運営元が隠されたウェブサイトで、通常のブラウザからはアクセスできません。.onion版のウェブサイトにアクセスするにはTorで接続する必要があります。
プライバシーを考慮してウェブサイトを閲覧・利用したい方のために、FacebookやBBCなど、複数のウェブサイトが.onionを使用したミラーサイトを開設しています。
- Facebook:www.facebookwkhpilnemxj7asaniu7vnjjbiltxjqhye3mhbshg7kx5tfyd.onion
- BBC:www.bbcweb3hytmzhn5d532owbu6oqadra5z3ar726vq5kgwwn6aucdccrad.onion
- New York Times:www.nytimesn7cgmftshazwhfgzm37qxb44r64ytbb2dj3x62d2lljsciiyd.onion
.onion版のウェブサイトであれば、Torによる通信経路の匿名化に正式対応している上に、Botなどと誤検知される心配もありません(Torによる接続は通常の方法と違うので、ウェブサイトによってはBotなどと誤検知されてしまう可能性があります)。
かつてはTwitterにもTor版がありましたが、イーロン・マスク氏に買収されてから数か月経った2023年3月6日に廃止されました。
速度が遅い
複数のサーバーを経由するので、通信速度は非常に遅くなります。
ウェブサイトを閲覧する際にプライバシーを守るのが目的であれば、わざわざTor Browserを使わなくとも、VPNを利用したり、トラッキングをブロックする拡張機能を利用するだけでも問題ないでしょう。
利用できないウェブサイトがある
Tor Browserはその匿名性の高さから、犯罪などに悪用されることもあります。
そのため、ウェブサイトによってはTor Browserでの閲覧や利用を制限している場合もあります。
著名な例では、WikipediaがTor利用者による記事の編集を制限しています。
捜査対象になるリスク
Tor Browserを利用すると、犯罪の容疑者として捜査当局に目を付けられるリスクがあります。
Torブラウザは犯罪者およびテロリストが利用する事例があるため、捜査当局はトラフィックの監視を行っています。そのため、Torブラウザを利用しているユーザーが捜査当局の監視対象として認識されてしまう可能性があることに注意してください。
一例として、Torや暗号化したメールを使用すると、しない場合に比べてNSAにデータを保持される可能性が上がってしまうという事が、エドワード・スノーデン氏が告発したNSAの極秘資料によって明らかになっています。
参考:匿名通信システム「Tor」や暗号化メールを使うとNSAにデータを保持される可能性が上がる – GIGAZINE
ウェブサイトが日本語に対応
正確な日付は不明ですが、最近になってTorの公式サイトが日本語に対応しました。

公式サイト:Tor Project | オンラインでの匿名性を実現
まだブログなど一部のページは英語のままですが、それでも基本的なページが日本語に対応したことで、便利になったと思います。
まとめ
Tor Browserを使えば、強力な匿名性を保ちながらインターネット閲覧ができるため、プライバシーを保護するのにピッタリです。
その強力な機能は一般の方にはいささか過剰で、使う機会がないかもしれませんが、政府や企業の検閲、または悪意あるハッカーなどから身を守る手段として、覚えておくと良いでしょう。