仕事の効率を高め、生産性を上げると思われがちなマルチタスクですが、実際には効率を悪くし、生産性を下げる事が分かっています。
なぜ複数の事を同時に行っているのに、マルチタスクは生産性を下げてしまうのか…
その主な理由をは以下の5つです。
- そもそも人はマルチタスクができないから
- 余計な作業が発生するから
- 記憶力が低下するから
- 脳にダメージを与えるから
- 危険だから
それぞれ詳しく解説します。
1.そもそも人はマルチタスクができないから
いきなり身も蓋もない話ですが、そもそも人はマルチタスクを行うことができません。
人間の脳は1つの事にしか集中できず、私たちが日頃マルチタスクと呼んでいるものは、実際には複数のタスクを高速で切り替えているだけだということが数多の研究で分かっています。
マルチタスクは状況を改善するどころか、むしろ問題を悪化させる。そもそも人間の脳は、一度に複数のことに注意を向けることができないのだ。
(中略)
スタンフォード大学の神経科学者エヤル・オフィル博士は「人間はじつのところマルチタスクなどしていない。タスク・スイッチング(タスクの切り替え)をしているだけだ。タスクからタスクへとすばやく切り替えているだけだ」と説明している。
つまり、マルチタスクを行っても生産性が向上しない理由の1つには、「そもそもマルチタスクができない」という根本的な問題があります。
2.余計な作業が発生するから
1時間のタスクを2つ行う場合、トータルで必要な時間が1+1=2で2時間かというと、実際には違います。
タスクごとに準備や片付けが必要ですし、途中で別のタスクに切り替える為の作業が追加で必要になる為、実際に必要な時間は2時間よりも多くなります。
しかし、最初から1つのタスクに集中すれば、タスクに必要な準備や片付けは1回で済みますし、途中で別のタスクに切り替える為の手間などもかかりません。
例えば、「仕事の時間が60分で、仕事の準備が10分」だとしましょう。
この場合、6つの仕事をすると、準備だけで10分x6=60分となり、1つの仕事と同じ時間(60分)が必要になります。
ですが、仕事が1つだけなら、準備は10分x1=10分となる為、複数の仕事をこなす場合と比べ、50分もの時間を節約できます。
同時に行う仕事が少なければ少ないほど、理想を言えば一度に1つの仕事だけに集中する方が、仕事と直接関係ない時間を減らすことが出来る為、生産性が上がります。
3.集中できないから
マルチタスクを行う場合、目の前のタスクだけでなく、常に複数のタスクに気を配る必要があります。
また、うまく目の前のタスクに集中する事ができても、途中で中断して別のタスクに切り替えなければならない可能性もあります。
これでは、集中してタスクに向き合うことができません。
しかし、取り組むのタスクが1つだけであれば、他の事はすべて忘れて1つのタスクに集中する事ができます。
1つの作業に集中する事で、集中力が途切れることなく作業を続けることができますし、勢いがついてさらに効率的にタスクをこなせるようになる事もあります。
4.脳に悪影響を与えるから
マルチタスクは脳に悪影響を与えます。
マルチタスクが習慣になっていると、ストレスホルモンであるコルチゾールが増加し、「認知機能の低下」や、「注意力の欠如」を引き起こします。
また、ロンドン大学の研究によると、認知タスク中にマルチタスクを行った参加者は、マリファナを吸ったり徹夜をした場合と同じようなIQスコアの低下を起こしました。
マルチタスクは単に作業効率が悪いだけでなく、脳の働きにも様々な悪影響を及ぼすということです。
5.危険だから
マルチタスクはとても危険です。
例えば、運転中にスマートフォンを使い、メールや通話をする行為は、(例えハンズフリーであっても)飲酒運転と同じくらい危険な行為です。
マルチタスクの危険性は歩行者でも同様で、歩きながらスマートフォンを使用する人は、横断歩道に入る際に、前に目を向ける確率が低いという調査結果があります。
また、ある研究では、車に轢かれて救急病院に行ったティーンエイジャーの5人に1人が、事故時にスマートフォンを使っていたことを認めています。
オフィスでスマートフォンを使うだけなら、ただ作業の効率が下がるだけで済むかもしれません。
しかし、屋外でマルチタスクを行うと、最悪の場合には命を失う可能性すらあるということです。
大事故を起こしてしまったら、効率など求めている場合ではありませんよね。
まとめ
マルチタスクは百害あって一利なしです。
仕事、勉強、家事…どんな作業でも、取り組む際は1つの事に集中する”シングルタスク”を心がけましょう。
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