イギリスでサービスを受けた際、チップを支払う必要があるのでしょうか?
イギリスにおけるチップの相場や払い方について解説します。
イギリスのチップ文化とは?
イギリスにはチップ文化があります。ですが、他のヨーロッパ諸国と同様、アメリカほど強制はされておらず、支払わないケース(支払わなくてもマナー違反でないケース)もあります。
また、アメリカとは異なり、イギリスではチップの有無を問わず、スタッフには最低賃金が適用されています。
そのため、チップを支払う場合も、金額はアメリカと比べて少額です。
余談ですが、チップ文化は18世紀のイギリスで生まれたという説があります。
チップの文化はイギリス全土で同じ
イギリスは以下の4つの国から構成されています。
- イングランド
- ウェールズ
- スコットランド
- 北アイルランド
これら4つの国は全て通貨が同じで、チップの習慣も似ています。
なので、イギリスでは旅行先によって、チップのマナーや金額を調整する必要はありません。
イギリスの通貨
イギリスではユーロではなくイギリス・ポンドが使用されています。
1ポンドは193円です(2024年10月1日の相場です。為替レートは日々変わるので注意してください)。
また、補助単位として「ペンス」があります。
100ペンスは1ポンドです。
チップの払い方
チップは現金で払うイメージを持っている方も多いと思いますが、クレジットカードで支払うことができる場合もあります。
例えば、レストランやタクシーを利用した際に、合計金額にチップの代金を上乗せして払う場合は、クレジットカードが使えます。
イギリスでは、デビッドカードやクレジットカード、タッチ決済など、キャッシュレス決済が非常に普及しています。なので、チップを支払う際に、現金ではなくキャッシュレス決済で支払う機会も多いでしょう。
もちろん、ホテルスタッフに荷物を運んでもらった場合など、現金で支払う場合もあるので、小銭も用意しておきましょう。
現金で支払う場合の注意点
現金でチップを支払う場合、紙幣でも硬貨でも構いません(イギリスには1ポンドなど少額の紙幣もあります)。
ただし、細かいお金をジャラジャラと複数渡すのはマナー違反です。
チップの相場
イギリスでサービスを受けた際、チップはいくら払えば良いのか?
チップの相場や払い方、マナーは、サービス・お店の種類によって変わります。
ホテル
イギリスでは、ホテルの従業員のほとんどが、何か特別なことをしてくれたり、高級ホテルに宿泊したりしない限り、チップを期待していません。
しかし、一部のホテルでは、請求書にオプションのサービス料を上乗せするようになりました。スパやジムの設備があるホテルでは、多くのスタッフが常に最高の状態を保つよう求められているため、この傾向が顕著です。
チップの金額についてもっと意見を言いたければ、請求書からサービス料を除外するよう選択できます。
他、ホテルにおけるチップの相場や支払い方法は以下の通りです。
- 枕銭(ピローチップ)は基本的に不要です。ただし、部屋を散らかしてしまった場合などは2~3ポンド置いていっても良いでしょう。
- スタッフに荷物を運んでもらったら、荷物1つにつき1~2 ポンドのチップを渡しましょう。
- ドアマンがタクシーを呼んでくれた場合は、ホテルの豪華さに応じて 1 ~ 5 ポンドのチップが適切です。
- ハウスキーパーには通常チップは渡されませんが、チェックアウト前に部屋にいくらかのお金を置いておくことはできます。
- 英国では係員付き駐車サービスは一般的ではなく、通常は料金がかかるため、チップは必要ありません。
レストラン
レストランで食事をする際は、カジュアルなレストランでも高級レストランでも、チップは食事代の10%程度を支払うのが標準です。
サービスが本当に素晴らしかった場合は、15%ほどのチップをあげてもかまいません。逆にサービスが本当にひどかった場合は、チップを全く渡さなくても問題ありません(この点はアメリカと違いますね)。
また、最初から料金にサービス料(service charge)が含まれている場合も、チップを渡す必要はありません。
最近のレストランでは、請求書にサービス料(Service Charge)として合計金額の10~15%を上乗せして請求する店もあります。例えば、メニューの下に「A discretionary service charge of 12.5% will be added to your bill.(12.5%のサービス料がお会計に加えられます)」などと記載されていれば、チップを渡さなくても大丈夫!
サービス料について分からない場合は、請求書の計算方法について直接店員さんに尋ねるといいでしょう。
バーとパブ
イギリスのバーテンダーのほとんどはチップを受け取りません。
しかし、良いサービスを受けた際など、バーテンダーに感謝を伝えたい場合もあるでしょう。その場合、一番いいのは現金を渡して「一杯おごってあげるよ」などと言うことです。たいていの場合、バーテンダーは笑顔で飲み物を注いで、その分をあなたの勘定に加えてくれます。
ただし、すべてのバーテンダーが仕事中に飲みたがるわけではないので、後で飲むと言っても驚かないでください。
テイクアウトを注文した場合は、カウンターにあるチップ入れにチップを入れていくと良いでしょう。チップを入れるよう強制されることはありませんが、支払い後に小銭を置いていく人が多いです。
ガストロパブ
ガストロパブ(バーとレストランを兼ねた飲食店)の場合は、通常のレストランと同程度(つまり会計の10~15%程度)のチップを支払うと良いでしょう。
テイクアウト
テイクアウトレストランから配達を注文する場合、チップは必須ではありませんが、配達員に数ポンド渡すのも悪くありません。
自分で食べ物を受け取る場合は、チップを渡す必要はありません。
ファストフード、カフェ
ファストフード店ではチップは不要です。
カフェの場合も、自らレジで注文し、カウンターで飲食物を受け取るスタイルのお店では、チップは不要です。
軽食を提供するカフェで、店員さんがテーブルまで来て注文を取ってくれたり、料理を運んでくれるスタイルの場合も、1人10ポンド程度のカジュアルなお店ならチップは必須ではありませんが、サービスが良かった場合には料金の10~15%をチップとして置くと良いでしょう。
また、チップ入れがある場合は、そこに小銭を入れることもできます。
タクシー
タクシーでは、料金の端数を切り上げるのが慣例です。お釣りをそのままチップとして渡す形ですね。
メーター制のタクシーの場合は、合計金額の10%~15%をチップとして渡すこともあります。
地方のタクシーやミニキャブを利用する場合は、事前に合意した定額料金を請求されることがあります。ほとんどの人はチップを渡しません。
ツアーガイド
ガイド付きツアーの最後には、ガイドの仕事をうまくこなしてくれたことに対して少額のチップを渡すのが慣例です。
楽しい時間を過ごし、よく世話され、楽しませてもらえた場合は、ツアー料金の 10 ~ 15 パーセントのチップを渡してもよいでしょう。一人旅の場合は最低 2 ~ 4 ポンド、家族の場合は 1 人あたり 1 ~ 2 ポンドと考えてください。
バスや長距離バスのツアーでは、運転手が出口の近くにチップを入れるための容器を用意していることがよくあります。数日間のツアーに参加した場合、特に長距離バスの運転手がツアーガイドも務めている場合は、旅行中の毎日、1人あたり2~4ポンドのチップを長距離バスの運転手に渡してください。
美容室、エステ
エステは料金にサービス料金が含まれているので、チップは不要です。
美容室も特に必要ありませんが、支払う場合は料金の10%くらいが目安です。
スパ、サロン
英国ではスパでチップを渡すことは一般的ではありませんが、ヘアカットやネイルをしてもらった場合は、チップを渡す必要があります。
スタイリストやネイリストに合計請求額の10%をチップとして渡しましょう。
トイレ
チップとは少し違いますが、イギリスでは公衆トイレが有料の場合があります。なので小銭を用意しておきましょう。
博物館や美術館のトイレは無料で利用できます。
まとめ
この記事では、イギリスのチップ文化について解説しました。
しかし、ここで紹介したことが全てであり、正しいとは思わないでください。
チップは文化です。
そのため、地域や時代によって相場や支払いの在り方や必要性が変わることもあります。
イギリスに住んでいるマイケル・ブース氏は、チップについてこう述べています。
イギリスはより複雑だ。特に大都市では最近、チップを求められるようになってきた。金額はほんの気持ち程度(1ポンドくらいか)から食事代の20%まで様々で、たいていはお勘定にすでに含まれている。そうと知らずにチップを2度払ってしまう外国人も多い。1度は会計のときに、もう1度はテーブルにいくらか残す形で。
私の暮らすスカンディナビア地域では、ホールスタッフはごくまっとうな待遇を受けているのでチップは全く期待されていない。だからこそ私はここに住んでいるのだ。
コロナ禍によって、チップを払う圧力が強まる地域があるかもしれない。ロックダウン下で破産を免れた店も、厳しい経営状況に直面している。賃金が極限まで切り詰められるようになり、どの店の従業員にとってもチップの存在はこれまで以上に重要になるだろう。
文化や流行が変わっていくように、チップの在り方も変わっていくという事です。特に、コロナウイルスの流行は人々の生活を大きく変えました。それはチップ文化も例外ではありません。
実際、チップ文化が根付いたアメリカでも、コロナやキャッシュレス対応を経て、チップを巡る環境が変わっているといいます。
チップについては、杓子定規に考えるだけではなく、社会の変化に合わせて、柔軟に対応する事も大切だという事です。