※この記事では、マスク氏が2023年3月に設立したX Corp.、X Holdings Corp.、xAIについても解説しています。
2022年4月19日、イーロン・マスク氏はTwitterを買収する為に、「X Holdings」という名前の持ち株会社を3つ立ち上げました。
3つの会社は完全に同名ではなく、それぞれローマ数字で数字が割り振られています。
- X Holdings I
- X Holdings II
- X Holdings III
これらの企業は税金が安いデラウェア州で設立され、テキサス州オースティンに本拠を置いています。
SEC(米証券取引委員会)に提出された2つの書類によれば、これらの会社は「直接的または間接的にTwitterを買収または合併するために設立された」といいます。
提出書類によれば、この計画は「プロジェクト・エックス(Project X)」と名付けられています。
X Holdingsの役割
マスク氏が設立した3つのX Holdingsは、マスク氏がTwitterを買収する為の財務的な作戦に使用されました。
それぞれの企業は以下の様な役割が与えられています。
X Holdings I, Inc.
イーロン・マスク氏が立ち上げた持ち株会社です。オーナーはマスク氏です(100%所有)。
SECに提出された書類には、この会社の社長、財務担当、書記としてマスク氏の名前が記されているとの事です。
この企業は、2022年10月27日に後述する子会社のX Holdings IIをTwitterと合併させる事で、Twitterを買収し、親会社となりました。
その後、2023年3月15日に後述するX Holdings Corp.と合併し、消滅しました。
X Holdings II, Inc.
X Holdings Iの100%子会社です。
2022年10月27日にTwitter Inc.と合併しました。合併後の社名は「Twitter」が引き続き使用されます。
2023年3月15日には、後述するX Corp.との合併が申請されました。
X Holdings III, LLC
Twitterの買収に必要な資金は約440億ドル(約6.4兆円)でしたが、その全てをマスク氏が個人の貯金で工面した訳ではありません。
マスク氏はX Holdings IIIを、Twitter買収の資金調達の為に設立しました。
X Holdings IIIは以下の大手銀行から、Twitter買収のために合計130億ドルを集めました。
- Bank of America
- Barclays
- BNP Paribas
- Mizuho(みずほ銀行)
- Morgan Stanley
- MUFG(三菱UFJ銀行)
- Societe Generale
なお、これらは投資ではなく借金です。
テクノロジーに関するメディア「デジタル・トレンズ」のライターであるNathan Drescher氏によれば、X Holdings IIIは、Twitterの買収に伴い解散したとのことです。
X社
イーロン・マスク氏は、3つのX Holdingsに加え、2023年3月9日にネバダ州でX Corp.とX Holdings Corp.を設立しました。
また、同日にX.AIを設立していた事も後に判明しました。
この3社の役割は以下の通りです。
X Corp.
X Corp.はネバダ州で設立され、カリフォルニア州サンフランシスコに事務所を構える非公開企業です。
日本のメディアでは「X社」とも呼ばれています(「Corp.」は「Corporation」の省略形であり、会社や法人を意味します)。
2023年3月15日にTwitter Inc.との合併を申請しました。合併後の社名はX Corp.となります。
Twitterが裁判所に提出した書類によれば、同年4月4日の時点で既に合併は完了しており、Twitter社(Twitter Inc.)は消滅している模様。
公式サイト:Xについて
X Payments
Xは決済サービスを提供する為に、完全子会社のX Payments LLCを設立しています。
Xはアメリカの全州で送金業者の免許を取得し、2024年後半には全米で決済サービスを開始する予定です。なお、2024年11月時点で、免許を取得できているのは38州とのこと。
まだニューヨーク州などの主要な州ではライセンスを取得できておらず、Xで決済サービスを開始する目途は立っていません。
公式サイト:Payments
X Holdings Corp.
X Holdings Corp.はイーロン・マスク氏の持株会社で、上記のX Corp.の親会社です。
X Corp.と同様、ネバダ州で登記されました。
2023年3月15日に、先述のX Holdings Iとの合併が申請されました。こちらは存続会社なので、合併後も「X Holdings Corp.」という社名で残っています。
xAI
xAI(エックス・エーアイ)はイーロン・マスク氏がアメリカのネバダ州で設立した、AIスタートアップで、「宇宙の真の姿を理解すること」を目標にしています。
2023年11月4日、xAIは独自の言語モデルである「Grok」を発表しました。
GrokはChatGPTのような対話型AIで、Xの有料プランであるX Premium+に加入しているユーザーに提供されています。
公式サイト:xAI(英語)
まとめ
マスク氏はTwitterを買収するにあたって、複数のX社を立ち上げました。
2023年4月11日現在、各X社の状況をまとめると以下の様になります。
会社 | 状況 |
X Holdings I | X Holdings Corp.と合併し、消滅。 |
X Holdings II | Twitter Inc.と合併し、消滅。 |
X Holdings III | Twitter買収の為に受けた融資を処理。 |
X Holdings Corp. | X Holdings I, Inc.を吸収合併(こちらが存続会社)。下記X Corpの親会社。 |
X Corp. | Twitter Inc.を吸収合併。Twitterの現運営企業。 |
マスク氏による、複数のX社を利用したこれらの動きは、目的が不明の部分も多くあり、今後どのように展開されるのかも不明です。
Twitter JapanはX JAPANに!?
今回の社名変更がニュースになった事で、Twitterユーザーの間では「Twitter JAPANがX JAPANになるのでは?」と盛り上がり、一時は「X JAPAN」と「Twitter Japan」がトレンド入りしていました。
X JAPANのリーダー・YOSHIKI氏も、Twitterで「X」という社名を「Cool name…!」(カッコいい名前…!)と称賛しています。
Cool name..!#YOSHIKI #X #XJAPAN #Twitter #TwitterJapan @elonmusk @Twitter @TwitterJP https://t.co/Y6ImEVeVWO pic.twitter.com/DfajHov1si
— Yoshiki (@YoshikiOfficial) April 11, 2023
余談:Twitter以外もXの傘下に?
持ち株会社であるX Holdingsは、TeslaやSpaceX、The Boring Company、Neuralinkなど、マスク氏が所有する他の企業も傘下にまとめる可能性が指摘されています。
しかし、マスク氏が保有する各企業は、投資家層がかなり異なる為、それらの企業をすべて一つにする事は必ずしも良いアイデアではないとマスク氏は考えています。
参考
- イーロン ・マスク Xホールディングス | 神奈川県のデザイン制作|デザインこねこ
- Twitter will be delisted from the New York Stock Exchange on November 8 | TechCrunch
- Elon Musk may combine Tesla, Twitter, SpaceX into ‘X Holdings’
👀 @elonmusk revealed more info on his @Twitter bid this AM, including 3 new holding companies w/ the names “X Holdings”
He’s previously said creating a parent org called “X” for his companies is a “good idea,” though he told @TEDchris it’d be “tricky” https://t.co/WaOxzpGiWQ
— Sean O’Kane (@sokane1) April 21, 2022