テスラの創業者は本当にイーロン・マスクなのか?

EV(電気自動車)を始め、ロボタクシーや人型ロボットでも注目を集めるテスラ。

そんなテスラと切っても切れない関係にあるのが起業家のイーロン・マスク氏です。

メディアでもマスク氏はしばしば「テスラの創業者」と紹介されており、そのイメージは広く定着しています。

しかし、テスラの設立経緯を辿ると、この表現は必ずしも正確とは言えません。

マスク氏は本当に「テスラの創業者」なのか?テスラの創業に関わっていたのは誰なのか?

この違いを知ると、テスラという企業の成り立ちとイーロン・マスクという起業家について、少し深く知ることが出来ます。

この記事では、テスラ創業の事実関係を整理しつつ、なぜイーロン・マスクが「創業者」と呼ばれるようになったのか を解説します。

テスラを創業したのは誰なのか?

テスラは2003年7月1日に米国デラウェア州で設立されました

社名は交流電気方式を発明したニコラ・テスラにちなんで「Tesla Motors(テスラ・モーターズ)」と名付けられました(2017年に現在の「Tesla(テスラ)」に改名)。

テスラを創業したのはマーティン・エバーハード氏とマーク・ターペニング氏の2人です。

設立当初、エバーハード氏はCEO、ターペニング氏はCFOを務めていました

つまり、”テスラの創業者”はこの2人です。

  • マーティン・エバーハード(Martin Eberhard)
  • マーク・ターペニング(Marc Tarpenning)

では、イーロン・マスク氏はいつからテスラに関わっているのでしょうか?

イーロン・マスクはいつからテスラに関わっているのか?

イーロン・マスク
イーロン・マスク

イーロン・マスク氏がテスラに関わったのは、設立からしばらく後のことです。

2004年初頭、マスク氏はテスラのシリーズA資金調達ラウンドに主要な出資者として参加し、取締役会長としてテスラの経営に参画しました。

その後もマスク氏はテスラの資金調達ラウンドで資金を提供し、2008年10月にはエバーハード氏に代わってCEOに就任します

マスク氏が創業期からテスラに深く関わり、同社を率いてきたのは事実ですが、最初に会社を立ち上げた訳ではありません。

では、なぜマスク氏は「テスラの創業者」として扱われているのでしょうか?

マスク氏が「テスラの創業者」と呼ばれるようになったワケ

イーロン・マスク氏が「テスラの創業者」として扱われるようになったのは、2009年に創業者の呼称を巡って訴訟が起こったことがきっかけです。

2009年、マスク氏は自らをテスラの創業者と名乗り、エバーハード氏について否定的な発言をしました

これに対して、エバーハード氏は同年5月にマスク氏を名誉棄損と契約違反で訴えました

その後、訴訟は和解に至ったのですが、その際にマスク氏を含む3名(残り2名は元CTOのJBストローベル氏と初期のエンジニアであるイアン・ライト氏)が新たに「テスラの創業者」を名乗る権利を得ました。

その結果、以下の5人がテスラの「共同創業者」となったのです。

  • マーティン・エバーハード
  • マーク・ターペニング
  • イーロン・マスク
  • JB・ストローベル
  • イアン・ライト

つまり、会社を設立したのはエバーハード氏とターペニング氏の2名だが、「共同創業者」として扱われている(少なくとも名乗る権利がある)人物は5人いるという事です。

「創業者」という言葉が生む誤解

訴訟と和解によって創業者が”増える”のは奇妙にも思えますが、イーロン・マスク氏のようなケースは必ずしも珍しいものではありません。

「創業者」と一言で言っても、その定義は必ずしも一つではありません。どこまでを「創業」と捉えるのかによって、創業者と呼ばれる人物が変わる場合があります。

例えば、最初にプロジェクトを立ち上げた人物を創業者とする考え方もあれば、事業のごく初期から深く関与し、会社の基盤を築いたメンバーまでを含めて「共同創業者」と捉える考え方もあります。

こうした言葉の曖昧さが、テスラのトラブルや「イーロン・マスクが創業者」という世間の認識を生んでいると言えるでしょう。

Wikipediaの創業者は誰?

インターネットの百科事典として知られるWikipediaにも、同様の問題があります

現在は独立して運営されているWikipediaですが、当初はポータルサイトを運営していたBomis社の社内プロジェクトとして始まりました。

Wikipediaの創設にはBomisの創業者であるジミー・ウェールズ氏と同社の従業員であるラリー・サンガー氏が関わっています。

Bomisの創業者であるジミー・ウェールズ
Bomisの創業者であるジミー・ウェールズ。
画像:Bunyod Rustamov, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons. トリミングして使用

しかし、ウェールズ氏はWikipediaの創設者は自分1人と考えており、サンガー氏のことはあくまで「雇われ従業員である」と考えています。

一方、サンガー氏は自身とウェールズ氏の2人がWikipediaの共同創業者だと主張しています。

Teslaのケースとは違い、こちらは未だに解決しておらず、双方の認識は相違したままです(ちなみに、Wikipediaの記事では2人をWikipediaの「設立者」としています)。

まとめ

テスラの創業者について整理すると以下のようになります。

  • テスラを設立したのはエバーハード氏とターペニング氏
  • マスク氏は設立後に参画した主要投資家・経営者
  • 法的にはマスク氏も「共同創業者」を名乗れる

イーロン・マスク氏は長期間に渡ってテスラを経営している人物です。私財も多く投入しており、財務面でもテスラを支えてきました。

しかし、「創業者」という肩書が正しいのかは難しいところです。

確かにマスク氏は法的に「テスラの創業者」を名乗る事ができますが、我々が一般に想像する「創業者」とは違うと言えるでしょう。