Palantir(パランティア)は意思決定に役立つ様々なデータ分析ソフトウェアを展開するビッグデータ解析企業です。
その中でも主力製品となるのが4つのソフトウェア プラットフォームです。
- AIP
- Foundry
- Gotham
- Apollo
この4つについて、この記事では解説していきます。
AIP

Palantir AIPは組織がLLM(大規模言語モデル)などのAI(人工知能)をセキュリティを確保したプライベートネットワーク上で安全に活用できるよう支援するソフトウェア プラットフォームです(AIPは「Artificial Intelligence Platform(AIプラットフォーム)」の略)。
アプリの構築、アクションの自動化、AIエージェントの開発などに活用できます。
Palantir AIPによって、お客様はPalantirが提供している機械学習(ML)テクノロジーのパワーを、大規模言語モデル(LLM)とともに、既存のPalantirプラットフォーム上で直接活用することができます。
なお、AIPはあくまで既存のシステムを一括管理できるプラットフォームであり、PalantirがAIやLLM(大規模言語モデル)を一から開発・販売している訳ではありません。
AIP上で動かすAIは既存のものです(例えばChatGPTでお馴染みOpenAIの「GPT」やxAIのGrokなど)。ただし、顧客の要望に合わせたカスタマイズやチューニングをする事はあります。
公式サイト:Palantir AIP
政府機関も活用
AIPは民間企業だけでなく、政府や行政、軍でも利用されています。
例えば、2024年にはAI企業のAnthropicとAmazonのクラウドサービスであるAWSと提携し、米国の情報機関および防衛機関がAWS上のAIP内でClaudeの運用が可能になりました。
ウクライナでも活躍
ウクライナは2022年に本格的なロシアの侵攻が始まって以来、世界で最も地雷の多い国となっており、領土の3分の1が地雷や不発弾によって汚染されています。
ウクライナ政府は地雷除去を進めるためにPalantirと契約し、AIPを導入しました。AIPは地雷除去活動におけるデジタル化とプロセスの自動化、地雷対策の意思決定を支援します。
なお、Palantirは地雷除去以外でもウクライナに協力をしており、前線から後方支援までウクライナ軍の情報管理を支えています。
日本の石川県も導入!
AIPは日本の石川県も導入しています。
AIPにより、膨大なデータを最大限に活用した体制が構築できると考えています。
現場の担当者が膨大なデータを直感的かつ安全に活用し、より迅速で的確な意思決定を下すことを可能にします。
厳格なセキュリティとガバナンスにより、個人情報の保護も徹底され、住民一人ひとりに最適な支援を届けるための強力な基盤となります。
AIPの力によって、災害対応だけでなく、平時の行政サービスにも革新をもたらし、社会全体の安心と安全を支えていきます。
Foundry

Palantir Foundry(パランティア ファウンドリー)は、SaaSのプラットフォームで、顧客が保有する社内外の各種データを統合、管理、保護、分析して、的確な経営判断や政策決定を支援するソフトウェアです。
民間セクター向けとされていますが、軍や政府など公共セクターでも活用されています。
Palantir JapanのCEOである楢崎浩一氏は「一般的なデータ分析ツールは設定など含め利用開始までに数カ月ほど必要なケースもあるが、FoundryはSaaSのため、数週間で利用できる点が支持されている」と述べています。
公式サイト:Palantir Foundry
各国の政府も愛用
Palantir Foundryは民間企業だけでなく、政府機関にも導入実績があります。
アメリカだけでも、疾病対策予防センター(CDC)、保健福祉省(HHS)、食品医薬品局(FDA)、国立衛生研究所(NIH)、退役軍人省(VA)をはじめとする数多くの保健・公衆衛生機関がFoundryを導入しています。
日本の石川県も被災者支援に活用
日本の石川県は、能登半島地震の被災者に関する情報が分散されていた為、効率的な支援を行う事ができませんでした。
そこで、石川県はPalanitr Foundryを活用し、合計15個のデータソースを統合して被災者に関する最新情報を提供する「被災者360」を構築しました。
これにより、被災者に関する情報が一か所に集約され、石川県は避難者の発見と支援を効率的に行う事が可能になりました。
The Noto Peninsula earthquake in January 2024 scattered over 62,000 evacuees across prefectures. Palantir engineers built “Victim 360”, unifying 15 fragmented data sources representing 120,000 citizens in the region, enabling evacuees to be found and supported. When flooding… pic.twitter.com/2TanYB43ly
— Palantir (@PalantirTech) 2025年10月21日
コロナ渦で活躍
新型コロナウイルスのパンデミックが起こった際に、Foundryは各国の公共機関で活用されました。
アメリカではPalantirが疾病予防管理センター(CDC)と協力し、アメリカの医療機関から収集した匿名データをFoundryで分析し、使用可能な病床数や人工呼吸器の数を把握するのに協力したとされています。
また、イギリス政府はFoundryを使って医療キャパシティや患者の病院での滞在時間の把握を行っていると発表しています。
日本では神奈川県が新型コロナウイルス感染症対策に必要な各種データの統合や分析の為にFoundryを導入し、政策決定に活かしています。神奈川県の取り組みはPalantirが日本のSOMPOホールディングスと共同で設立したPalantir Japanが支援しています。
ちなみに、神奈川県は国内の自治体で最初のFoundryユーザーとのこと。
Foundry for Builders
「Foundry for Builders」は2021年に立ち上げられた新興企業や中小企業を支援する取り組みです。
Palantirの顧客はほとんどが大企業や政府など大規模組織ですが、このプログラムではFoundryをサブスク制のフルマネージドSasSプラットフォームとして新興企業や中小企業など、より小規模な顧客に提供します。
アメリカではAIPと共に「Palantir for Builders」という名前で展開されています。
Gotham

Palantir Gotham(パランティア ゴッサム)は公共データを統合、管理、保護、分析し、公共サービスの抜本的な生産性向上を支援するソフトウェアです。
地方自治体から諜報機関、法執行機関、軍など、公共セクター向けて提供されています。
Gothamを使えば、大量の「構造化」データ(スプレッドシートなど)と「非構造化」データ(画像や動画など)を1つの集中データベースにインポートし、すべての情報を1つのワークスペースで視覚化して分析する事ができます。
この実現には「ダイナミック・オントロジー」と呼ばれる技術手法を用いています。
10年以上にわたり、Gothamは世界中の防衛機関、情報機関、災害救援組織などの複雑なデータから、数々のインサイト (知見、洞察) を引き出しています。Gothamは膨大な量のニアリアルタイム データを結合、リッチ化して1つの統合ビューで提供します。これによって、複数ユーザーが共により信頼できる意思決定をより迅速に行うことが可能になります。
価格は不明ですが、米国のFDA(食品医薬品局)に犯罪集団を検知するためにGothamを、わずか2万8000ドルで提供したことが判明しています。
旧名称はPalantir Goverment(パランティア・ガバメント)。
公式サイト:Gotham | Palantir
ウクライナでも活躍
AIPと同様、Gothamもロシアと戦うウクライナ軍に大きく貢献しています。
パランティア社のAIプラットホーム『ゴッサム』は、ウクライナ軍の善戦に大きく寄与している。
システムはこうだ。
まず、軍事衛星や偵察機など西側の軍事顧問団が入手できるあらゆる情報に加えて一般人のSNSなどから敵の位置情報、被害状況など膨大な情報を、スターリンクを通じて収集。
それをAIが瞬時に分析し、敵の正確な位置情報、効率的な攻撃法などを立案。その情報はPCを通して戦場の各所で同時に共有できる。ウクライナ軍がヘルソンを奪還できたのも『ゴッサム』によって、ロシア軍の正確な位置を把握できたためといわれる。
Apollo

Palantir Apollo(アポロ)は、Palantirのソフトウェア・プラットフォームをクラウドに依存せず、オンプレミスやエッジ環境など多様な環境で安定的に稼働させるためのソフトウェアです。
米軍高機動多用途装輪車両(ハンヴィー) から潜水艦まで、Apolloはあらゆる環境下における継続的な展開を実現します。
Apolloの登場によって、PalantirはFoundryおよびGothamのデプロイの頻度を増やすことが可能になりました。
公式サイト:Palantir Apollo
まとめ
これらの製品は単独で使うだけでなく、それぞれ、または別製品と組み合わせて企業や政府のデータ分析に活用されます。
大手企業や政府、行政などに向けた製品なので、一般の方はなかなか見る機会は無いかもしれません。
ですが、日本でもSOMPOや富士通などの企業が導入して活用しています。我々の知らないところで、これらPalantirのソフトウェアが私たちの生活を支えてくれているのかもしれませんね。
参考
- データ分析企業「Palantir」がSOMPOと新会社設立–創業者のピーター・ティール氏来日(CNET Japan)
